【乗車記】日本最後の寝台特急「サンライズ出雲」に乗るクリスマスの夜

旅行
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どうもでございます。

ばすてい(@morosaredo)です。


2022年12月24日。

恋人や家族どうしが互いの愛情を確かめ合う聖なる夜に、私は一人東京駅のホームにいました。白い息を吐きながら、ときどき時計に目をやり、列車の到着を待ちます。


もうすぐで会える。興奮で胸がはちきれそうでした。

若者たちの多くがそうであるように、私にとっても今日は特別な日なのです。普段は友達ゼロお金もゼロの無感情な日々を送っていますが、今日だけは違います。


胸に閉じ込めていた熱烈な恋心を、ありのままにさらけ出す夜です。ドキドキ、ソワソワしながら、会える瞬間を楽しみに待ち続けます。


駅員さん「まもなく8番線に当駅始発 寝台特急”サンライズ瀬戸”高松行き、“サンライズ出雲”出雲市行きがまいります」


キタキタキタキタキタ!!!!!!!!!!!!!!

愛しの寝台特急サンライズが来た!!!!!!!!!!


愛しのサンライズ号がついにやって来ました。

恋人を待っているかのような空気感を出してすみません。


電車を愛すという感覚がわからないという方も多いと思いますが、この「サンライズ号」に関しては、きっと理解してくれる方も多いのではないかと思います。


定期運行する日本最後の寝台列車「サンライズ瀬戸・出雲」

往年の寝台列車

1950年頃から大衆に普及したとされる寝台列車

列車内にベッドがあり、寝ている間に目的地まで届けてくれる列車です。

当時は夜行バスも格安航空(LCC)も存在せず、寝台列車は長距離旅行の主要な選択肢でした。


寝台列車最大の魅力はなんと言っても極上の旅行体験ができる点にあります。

日が変わる前に列車に乗り込み、特別感を楽しみながら夕食を食べ、車窓に流れる夜の街を夜通し布団から眺め、朝起きたときに「ここはどこだろう?」と景色から推測してみる、という最高の旅行感を味わうことができるのです。


新幹線の登場や夜行バスの台頭によってほぼすべての寝台列車が2015年までに廃止されています。

そんななかで唯一残っているのが、この「サンライズ瀬戸・出雲」号なのです。


1998年運行開始と比較的新しい列車ではありますが、もう既に25年の歴史があります。

一般的に電車車両の寿命30年から40年と言われており、寝台列車は一度の乗車人員が少ないため収益性も低く、後継車両が確実に作られるとは言い切れないのが現状です。日本最後の寝台列車は今後数年間しか乗ることができないという可能性も十分にあるのです。


サンライズには瀬戸号出雲号があり、瀬戸号は東京駅─高松駅間出雲号は東京駅─出雲市駅間を結んでいます。

それぞれ東京駅─岡山駅間では連結して運行し、岡山駅で切り離し作業を行ってそれぞれの目的地へ向かいます。

今回乗るのはサンライズ出雲号。一晩かけて島根県出雲市を目指します。


寝台のタイプは6種類あり、今回私が選択したのは最安の「ノビノビ座席」

他の5種類の場合は乗車券+特急券+寝台券(6500円~15000円ほど)が必要ですが、ノビノビ座席はA寝台でもB寝台でもないため、乗車券+特急券+指定席券(530円)で乗車することができます。


サンライズに乗車! そして戦争

いよいよ乗車します。

周りの人たちを見てみると、みんな期待と興奮が顔に現れ、ニコニコしています。


それじゃあ早速自分のベッドに行って荷物を置いて……といきたいところですが、ここでひとつ、に参加する必要があります。

そう、シャワーカード争奪戦です。


サンライズ車内にはシャワールームが用意されており、販売機で購入したシャワーカード(330円)を使うことで利用することができます。気分良くぐっすり眠るためにも、シャワーは絶対に浴びたいところ。


しかし、給水タンクの容量の都合上、シャワーカードの販売数は20枚限定

そのため、販売機に最も近い4号車と11号車の扉から乗車する人が非常に多く、駅のホーム上で熾烈な順番争いが行われるのです。


私も列車到着の10分ほど前に列に並んだわけですが、ちょっと遅すぎたみたいで既にたくさんの人がいました。みんな楽しそうにニコニコはしていましたが、頭ではシャワーカードのことを考えているのか、目が血走っていました。


戦に出遅れるとは……不覚です。

悔しいことに、本当は30分以上前にホームに来ていたのですが、盛大な勘違いをしており10号車の場所に並んでしまっていたのです。


というのも、実は販売機があるのは11号車ではなく10号車。

普通に考えて10号車の扉から入ればいちばん早く自販機に辿り着くと考えていたのです。しかし、扉の配置から考えると一番近いのは自販機のある号車の隣の号車だそうでして……。


10分前になっても何故か列に自分とおばあさんの二人だけだったので、何かがおかしいと思って隣を見たら長蛇の列。これは完全にやったなと悟ったのでした。


そういうわけでかなりヒヤヒヤしていたのですが、なんとか買えました。

かっこいい。使用しても穴が開いたりすることはなく、無傷で返却されるので、記念に持ち帰ることができます。この写真は記事執筆中に写真を撮ったものです。しかし実はこれ未使用品です。

そう、結局私はとある事情によりシャワーを浴びることができなかったのです……。


夜の街を駆け抜ける!

自販機の隣にあるラウンジに来ました。


ベッドのあるゾーンでは、寝ている人もいるため静かにすることが基本。周りの迷惑になることは避けなければなりません。

しかし、このラウンジであればあまり神経質にならず過ごすことができるので、就寝するまではここでずっと外の景色を眺めるつもりです。


同じような考えの人が多いのではないかと思い、荷物を自分のノビノビ座席に置くことなく急いで席を陣取ったのですが、みんな普通に自分の場所へ直行していました。


一人で勝手にアツくなって椅子取りゲームをやっていたことに気づき、虚無感に襲われていたら21時50分になりました。

サンライズ瀬戸出雲号、出発です!


「この列車は何だろう?」というような顔でこちらを見ているホームの人たちが、窓の外を流れてゆきます。

暖色照明の光がこぼれる窓を覗くと中にベッドがあり、しかも行先を見ると出雲や高松と書いてあるわけですから、相当異質な列車に見えているはずです。

そんな普通とは違う列車ならではの特別感こそ、寝台列車最大の魅力の一つと言えるでしょう。


ラウンジの窓はノビノビ座席の窓よりも何倍も大きく、これもラウンジの魅力です。


しばらくはラウンジで窓の外の景色を楽しみ、日が変わる頃にシャワーを浴びて、遅くとも1時までには就寝しようと考えています。

本当は一晩中夜景を見ていたいのですが、明日の予定もありますので、しっかり睡眠をとるつもりです。


しかし一点、惜しいのが窓の反射

車内が明るいため、窓に反射してしまい外の景色が写真に写りにくくなっています。肉眼だとそこまで気にならないのですが、写真を撮るとご覧の通り。

A寝台やB寝台の個室であれば好きに電気を消せるので、一晩中車窓を楽しみたい場合は寝台個室の利用が最適です。


食事

クリスマスのサンライズ号はかなり多様な人たちが乗っていて、私のような大学生をはじめとして、スーツ姿のサラリーマン初老の夫婦iPadで絵を描いているイラストレーター(隣の人と仕事の話をしていた)、いかついカメラを肩から下げている鉄道オタクYouTuber……


格安航空や新幹線、夜行バスが登場したことにより、寝台列車の魅力は浪漫だけになったと言っても過言ではありません。そんな現代において、わざわざクリスマスの夜に電車に乗っている、そんな旅好きの乗客たちにどこかシンパシーを感じつつ、流れる夜景を楽しみます。


あと10分ほどで横浜駅に到着します。そろそろお腹もすいてきたところです。

今日は特別な夜ですので、こんな夜にふさわしい、特別なものを用意しました。


ホールケーキです。

クリスマスといったらケーキですからね。しかも今日は記念すべき、初めて夜行列車に乗車する日。張り切って、4.5号を注文しました。直径13.5cm、4~5人分。


普段の食事で1人前を食べることにすら苦戦している私ですが、ケーキならいける気がします。なぜなら美味いから。


うーん、美味しい。ケーキってこんなに美味しかったっけ?

ホールケーキを独り占めしている背徳感もすごい気持ちいいです。


見てください、サンタさんのこのつぶらな瞳。

「今年も一年お疲れ様! 旅を存分に楽しむんじゃぞ」という、優しい言葉が聞こえてくるようです。


無限に食べられる気がする。わんこそばならぬわんこケーキって無いのかな。あっ、それケーキバイキングか! タハッ!


まぁ結局、普通に気持ち悪くなり、休み休み食べていたら日が変わってしまいました。


12月25日、午前1時。

ケーキを食べ始めてから既に2時間半。既に静岡駅を通過しており、もうそろそろで浜松駅に着く頃でしょうか。

賑やかだったラウンジも気付けば私一人。こんなはずじゃなかった。


あの時までは、もっと素敵な夜になると思っていたのに……。


見てください、サンタクロースのこの馬鹿にした目。

「4.5号なんて一人で食べられるわけないだろ、頭使って考えろタコ(裏声)」という、嘲笑の声が聞こえてくるようです。


寝ます

結局食べ終わったのは1時過ぎ。

誰もいなくなったラウンジを後に、トボトボと自分のトボトボ座席…じゃなくてノビノビ座席へ向かいます。


時間も遅いし、気持ちも悪いので、シャワーは浴びずにそのまま寝ます。トホホ……。

1分でも多くの睡眠時間を確保するために、早足でトホトホ座席…じゃなくてノビノビ座席へ向かいます。


ノビノビ座席はこんな感じ。

廊下と就寝空間にわかれています。みんな既にカーテンで廊下の明かりを遮って寝ているようです。音を立てないよう、静かに自分の番号の場所を探します。


ここが私の就寝スペース。この細長い空間が一人に割り当てられています。

左右には壁もあるため、ある程度のプライバシーは守られるようになっています。


小窓と小さなテーブルがあり、アメニティのコップが用意されています。その上には照明とそのスイッチ。コンセントが無いのが惜しいところですが、格安なので妥協点です。


横を向くとこんな感じ。壁があるのは一部分までなので、足元は丸見え。

貴重品などは窓際に置き、しっかり管理する必要があります。


シーツと枕カバーも用意されています。シーツには毛布が入っていました。

枕はありませんので、リュックや衣類に枕カバーをつけて枕にするのがおすすめです。


天井には空調設備があったのですが、12月だというのになぜかうっすらと冷風が噴き出しており、止めようと思ったのですが風向きの変更しかできませんでした。

オフにすることもできるはずなのですが……何か操作を誤ったか、機器に不具合があったのかもしれません。


寝る前に洗面台でしっかりと歯磨きをして、歯にこびりついた虫歯菌どもを洗い落とします。


さて、もうとっとと寝ましょう。

当初の予定ではシャワーを浴びたり、車内探検に行くつもりだったのですが、ケーキのせいで予定が完全に狂いました。いや、まぁケーキのせいというか私のせいなんですけど。


というわけで、1時30分、就寝。


おはよう

おはようございます。12月25日、午前8時。

パッと目を開け窓を見ると、


そこは一面の銀世界でした。

現在地はおそらく岡山県と鳥取県の間の山奥だと思われます。天気予報だと山陰は雨か雪になると言われていましたが、夜から雪が降り続けていたらしくホワイトクリスマスになりました。


実は12月22日、23日はこの付近の豪雪によりサンライズ号が運休しており、24日も高確率で運休になると予想されていました。


微妙な天候の変化により運行できた、まさにクリスマスの奇跡と言えるでしょう!

言い過ぎか。


コートを枕にして寝ていたのですが、夜中にあまりにも寒くて着てしまいました。寒がりなので、ヒートテック+Tシャツ+裏起毛シャツ+長袖シャツというようにある程度着こんでいたのですが、これでは足りなかったみたいです。

ノビノビ座席って真冬だと結構キツイのかも?と感じました。


車内には食べ物の販売所や食堂などありませんので、事前に購入しておく必要があります。私は東京駅のコンビニでおむすびセットを買っておりました。


最高の朝すぎる。


寝台列車でしか体験することのできない、旅情MAXのモーニングでした。


9時半。松江駅を過ぎた頃には乗客のほとんどが既に降車していました。


岡山駅や米子駅で降りる人が多いのだと思います。

そういえば岡山でサンライズ出雲とサンライズ瀬戸の切り離し作業を見るためにホームに出たかったのですが、普通に起きられませんでしたね。ドンマイ!


山間部を抜け市街地に入ると、雪はそこまで積もっていませんでした。


改めて、シートはこんな感じです。必要最低限で、個人的には十分だと感じました。


出雲市駅到着

9時58分、終点“出雲市駅”に到着しました。


鉄オタも、そうでない人も、みんなで写真撮影大会が始まりました。

思い出に残る素晴らしい列車「サンライズ瀬戸出雲号、ぜひ皆様も乗ってみてはいかがでしょうか。

ではまた。

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プロフィール

2003年生まれの大学生。
初めての自炊でオムレツを作って食中毒になりました。

役に立たない不真面目な記事や、音楽、旅行、ガジェット系の記事をよく書きます。

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モロサレド

  1. 去年まで数年間住んでいた出雲を見ることができて懐かしい気持ちになりました。
    来年あたりに帰省ついでに乗ってみるのも悪くないなー

    面白い記事ありがとうございます!

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