自分でも信じられない話なのだが、あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
その日午後10時から、カビコップくん&スーパー毒素くんと定期開催の「カラオケで駄弁ろう会」を予定していた。場所はカビコップの地元。私の家からはかなり距離があり、電車を乗り継いでいく必要がある。
遅刻しないよう、しっかりと電車の時間など調べ、着々と準備を進めたのだが結局予定よりも少し遅く家を出た私。この時点でドアホなのだが、ここからが凄い。
電車に飛び乗り、遅刻する旨をLINEグループで報告。
謝罪や処罰は現地で行われる。だいたいの場合、金銭的な処罰が多い。
LINEを送った後は、暇な時間が発生する。遅刻しているとはいえ、電車の中では急ぐこともできない。
とりあえず本を読んで時間を潰す。駅で停車する度に本から顔を上げて駅名標を確認。
数十分後、降車して乗り換え。そしてまた本を読む。次に降りるのは終点駅なので、いちいち駅で停まるたび駅名標に注意を払う必要はない。
そうしてしばらく本を読んでいたのだが、顔を上げたら電車が逆方向に走っていた。
折り返し運転始まってる!!!!!!!
本当にびっくりした。電車が折り返していた。
慌てて降車して駅員さんに事情を説明し、再び終点駅行きの電車に乗った。今度はもちろん本は開かず、代わりに終電の時間を必死になって調べた。かなりギリギリの時間になっていたのだ。
終点駅に着いた後は一度改札を出て他社線に乗り換える必要がある。そこから20分ほど電車に乗り、降車したらカラオケボックスは駅のすぐ目の前だ。
どうやらこの調子で行くと、終電に乗れば0時過ぎに到着するらしい。既に2時間の遅刻。いったいいくらの賠償金を払うことになるのだろう。というか友達関係は今後も継続されるのだろうか? 色々不安な気持ちを抑えて、電車に揺られる。
数十分後、終点駅に到着。急いで改札へ向かう。次に乗る終電車はあと15分で発車するため、冷や汗をかきながら改札前まで来た。ポケットをまさぐり、交通ICカードを取り出そうとする。
ない。
PASMO、ない、ポケットの、終電、駅員。
つい支離滅裂なひとり言を呟いてしまった。PASMOを失くしていたのだ。
まずい。いろいろとまずい。まず終電に間に合わない可能性があるのがまずい。
そして普通にPASMOを失くしたのがまずい。そんなに大金は入れていなかったはずだが、1000円くらいは入っていたはずだ。あと通学定期の機能も入れていたため、それも失くしたことになる。
(まずいまずいまずいまずいまずいまずい!!!!!!!!!!!!!)
泣きそうになりながら、とにかく駅員さんのもとへ向かった。
えっと、○○駅から乗車したのですが、途中PASMOを紛失してしまいまして……
お名前と電話番号を伺ってもよろしいですか?
ばすていです。電話番号は~~です……
窓口の機械で情報照会する駅員さん。
ばすていさんですね。わかりました。では現金精算をしていただき、その後 紛失届を書いてください。
運賃を現金で精算。財布に数百円しかなくて、これもかなり危なかった。普段PayPayを使っているため、現金を持ち歩くことが少なくなっていたのだ。
精算後、紛失届に名前や住所を記入し提出。駅員さんにすみませんと頭を下げ、駅員室を出た瞬間、マリオもびっくりのBダッシュで他社線の改札へ向かった。発車まであと5分。まだ間に合う!
改札に着くと急いでPASMOを取り出そうとしたが、失くしたことを思い出し、スマートフォンのモバイルsuicaを起動。100円しか入っていなかった。あと数百円足りない。銀行口座との連携はしていないので、口座からチャージすることはできない。
急いで券売機の前に行き、運賃を確認。切符を購入しようと財布を取り出す。小銭は30円しかなかったため、紙幣を取り出す。
紙幣が無い。
所持金30円だった。
【アナウンス】3番線より、○○行き、終電車が発車いたします
走り去る終電車。
あれ? 詰んでない?
終わりだ。全部完全に終わった。
ほぼ無意識的にグループLINEにメッセージを送ったあと、我に返り電話をかけた。
こんばんはごめんなさい
何? 来ないの?
もう罰則金額は決まったけど。カラオケの料金全員分と、スーパーで買い込んだ飲食物、しめて9600円。決まったから早く来て。
3時間遅刻してるんで異議は唱えられないんですけど、絶対スーパーで必要以上に買い物してますよね
何をしてるの? 今どこ?
今はあの……○○(終点)駅の改札のところの……
改札!? 終電やばいんじゃないの?
今発車しました
え?
え?
え?
いや、え?じゃなくて。どうするの?
どうしようもない状態の私。駅員さんがあちこちのシャッターを下ろし始めている。とりあえず駅の外まで歩いてきた。
どうやったって来れないじゃん
バスを乗り継いで……いや、もうバスも走ってないか……。安いタクシーとか……それでも数千円になっちゃうか……。
まぁ仕方ないし、今日は一回帰れば?
来てほしかったけどなぁ
えー……。帰るか……そうか……まぁどうしようもないしなぁ……
でもお金ないんでしょ? 帰りの切符は買えるの?
コンビニのATMで下ろせば
スタジオジブリ作品『金をおろせば』
じゃあ帰るね。また今度、ぜひ誘ってください
電話をしながら、改札口までトボトボと歩く。そこで、あることに気が付く。
あれ?
ん?
終電もう行ってんじゃん!!!!!!!
鉄道会社各社、だいたい終電は同じくらいの時間みたいです。ということは?
帰れないじゃん
100%詰んだ
光GENJI「詰気100%(つんき100%)」じゃん
うるさ
じゃあどうするの? 朝まで駅にいるの?
まぁそれしかないかな……。それかネットカフェか。でも無駄金払いたくないな……
ケチだ
辺りを見渡す私。夜の街は普通に治安が悪い。喚き散らしながら駅前を闊歩するグループや、座り込んで缶ビールを飲むグループ、奇声を上げながら歩く人が私の目の前を通り過ぎる。
ここに夜明けまでいなきゃいけないのか……?
どうにかする方法はないだろうか……。
いっそ歩いて行くか?
ここまで歩くの? 別にいいけど、たぶん着くの朝方になるよ
何かないだろうか……バス、歩き、タクシー……
あ!
レンタル自転車で行くか!
なるほどね
調べてみたら30分150円くらいだって。1000円かからずに行けるんじゃない?
自転車だと何時間くらいで着くんだろう
わからないけど、そうと決まったらすぐに自転車探しに行きます!
というわけで速攻自転車をレンタルし、マリオもびっくりのBダッシュでペダルをこぎ出した。
初めての電動自転車に衝撃を受ける。ひと漕ぎするだけで5漕ぎぶんくらい進む。
巨大な魔人に前カゴをつままれて引っ張られているかのような、多少の恐怖を感じるレベルの進み方だ。
ビルの間を抜け、住宅街を抜け、細い裏路地を抜け、時には真っ暗な川辺を走った。
正直、めちゃくちゃ楽しかった。こんな体験ができるなら、遅刻して良かったかもしれない。
友人諸氏には申し訳ないが、キミタチも同じ体験をしたら同じことを感じると思う。
電動自転車なので、途中でバッテリー残量がなくなることもある。こまめに残量を確認しつつ、切れる前にレンタルスポットを見つけて他の自転車に交換しながら進む。
バッテリーがなくなったからといって直ちに動かなくなるわけでもないので、あまりシビアに考える必要もない。かなり気楽に、ゲーム感覚で目的地を目指すことができた。
心の中で歌を歌いながら、寝静まった夜の街を走り抜ける。ルンルン気分である。人通りも少なく走りやすい。
なんとか日が昇る前には到着した。だいたい30~40kmほどの距離だ(地域の特定がされにくいように一応ぼかしています)。
あ
お待たせしました
ホントに来た
もはや偉いよ。すごく偉いことをした人のように見えてくる。全部自分のミスのせいなのに。
危うく騙されるところだったな。
とりあえずこれ、今日出たゴミ全部持って帰って。
はい
でも、これからどうする……? 今日普通に学校あるから、今からだとほとんど遊べないけど
今調べたら、もう少しで駅前のマクドナルドが開くって
朝マックを食べて帰りました。
遅刻時間 約8時間